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元町女子ロマンポルノ部座談会【その4♡】3/25公開『アンチポルノ』編

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ロマンポルノ誕生から45年を経て、再起動(リブート)された「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」。そんな新しいロマンポルノを、女性目線で観てみようという「元町女子ロマンポルノ部」第4回!

今回ご紹介する作品は『アンチポルノ』です。



公式サイト→


『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』の園子温監督が、近作に出演の続いている元AKB48研究生の冨手麻妙(とみて・あみ)、深田晃司監督作『淵に立つ』で映画ファンの度肝を抜いた筒井真理子を配して作り上げた作品です。


今回のメンバーはローズマリ子(29)、カナ(32)、スマ子(54)の5名。進行は元町映画館スタッフのみらいです。

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座談会おやつはついにご飯モノに。おにぎりと唐揚という布陣!





タイトルに込められた意図

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スマ子(54)

スマ子(以下、ス):この作品って、他のロマンポルノの作品とはずいぶん違うような…?

みらい(以下、み):どんな映画だと思ってました?

カナ(以下、カ):私はチラシビジュアルから、オシャレな感じなんだろうなって思ってて。10分に1回の濡れ場っていう決まりもあるし、これまでにけっこう濡れ場のある映画を撮ってきた監督だし、男性が「抜ける」という面をもっと強く出してくるのかと予測してたのに…これ絶対男性抜けないよね?!

み:これなら園監督の他の作品の方がたぶんよっぽど抜けますよね。

カ:そう!『愛のむきだし』とかの方が、もっと性衝動みたいなのが出てた。それが、この企画にぶつけてきてのこれが「アンチポルノ」なのか!と思って。

ローズマリ子(以下、ロ):なんでこのタイトルなんだろうって私も思ってた。

み:この企画のマニフェストをきっちり盛り込んだうえで、「決して抜けない」作品を作るという意図なんですね。

ロ:園子温的やわー。

ス:私はイデオロギーが強過ぎてちょっとどうなのかなって思っちゃった。

カ:もうこれは女性解放宣言ですよ。途中で感動して涙出たもん

み:ど、どこで?!

カ:自由になれ!って、京子じゃなくて筒井真理子さんが言うところ。自由って保証されながら誰ひとり自由じゃないっていうのが心に響き過ぎた…!

み:言葉がとにかく強かったですね。そのイデオロギー論が今回やりたかったことなんでしょうか?

カ:そんな気がする。

み:このマニフェストなんて俺がやりたいことをやるためには何の障害にもならないぜって言ってる気がしましたね。

カ:一定のルールと制作条件を守れば自由に映画を作ることができるという、このロマンポルノ・リブート・プロジェクトの場で、ルールに則って裸を使った表現をしましたけどなにか?っていう着地点ですよね。ポルノが肉体の快楽の部分に帰着するのであれば、むしろそうじゃないところにって。

み:女性の自由みたいなことをえらい言ってましたけど、それを普通のドラマとして描くこともたぶんできるわけで、何もこんな形で言わんでもとも思うんですが、でも同時に結局これがいちばん伝わる形だったような気もしちゃいます。

カ:何よりストレートに、女性の解放を男性が訴えたっていうね。



観やすいPOPさ

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ローズマリ子(29)

ロ:京子が羽織っているコートと真理子さんが着ているスーツ、これ同じ柄ですよね?すごく気になったんだけど。

み:アンリアレイジってブランドのものじゃないでしょうか。コレクションの度に実験的なことをするブランドなんですけど、このモザイク?のショーがあったように覚えてます。

ロ:モザイクかあ。だったら、わざと入れてるよね。ファッショナブルやし、リブートプロジェクトの中でもこの作品は若い人っていうかポルノ映画に慣れない人にも観やすいよね。

カ:旦那さんと2人ででもこれなら観れる。

ス:色彩がすごく計算されてて、画面がきれいやった。『時計じかけのオレンジ』を思い出したな。

み:画面は凝ってましたね。低予算でここまでやるか!って思いました。

ロ:それに、すごく笑えた!真理子さんの変貌ぶりとか、AV男優にしか見えないお父さん(笑)とか、画面と音楽の組み合わせとか。ホドロフスキー作品を観て笑える感覚と似てたなあ。

ス:アングラ感あるよね。人によっては取っ付きにくいのかも。

み:取っ付きにくい作品であることは確かなんですが、ビジュアルや音楽で取っ付きやすく見せている気はします。わからないなりにPOPに観れちゃうっていう。



絶対に“抜けない”ポルノ

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カナ(32)

カ:もうなんなら《ロマンポルノ・リブート・プロジェクト》に対してのアンチくらいの意味があるんじゃない?こういうプロジェクトでもアナタは“へんこ”なんですね、っていう。

み:そう、なんかすごく自意識を感じました。監督が5人並べられた場で、「園子温」をいかに打ち出すかって考えていたんじゃないでしょうか。

カ:こういうプロジェクトに参加しましたっていうんじゃなくて、自分のフィルモグラフィとして残すべく作っている気がする。5人並べられた時にっていうのはことさら考えてるよね。これまでの座談会を見てると、撮った監督の趣味がわかるねっていう感じだったけどこの作品はそうじゃないよね?

み:うまくカモフラージュされてるんじゃないかと思います。「園子温」という仮面をかぶって、その向こう側を見せないようにしてる。監督ごとに、この企画に対するアプローチの違いに驚きますね。それも園子温監督がいなければ気づかなかったことですが。

カ:だから結果として面白いよね。映画ファンはたまらんし、ポルノであろうが何であろうが、こういう企画はこれからもどんどんやってほしい。監督の腕の見せどころでもあるし、観客側にも、表現に対してだいぶ先入観に囚われてるっていうのを突きつけられる感じがある。

み:他の作品は「ロマンポルノ」を撮るんだっていう意思のもと作っていると思うんですよ。マニフェストに加え、ロマンポルノっていう言葉にも縛られている。でも園監督はもはやロマンポルノを撮ろうなんて思ってないんじゃないでしょうか。

カ:タイトルからしてもう確信犯ですよね。アート感というか色彩設計もそうだし、チラシデザインにしても圧倒的にロマンポルノ感がない。何かやりそうだなとは思ってましたけど想像を超えてきましたね。表現の自由ってこういうこと?!みたいな。

み:そしてポルノと銘打たれてるのに男性にも女性にもまったく興奮させないという。

カ:あり得ない設定の中に様々な要素のエロを盛り込むっていう、ある意味ではロマンポルノらしい部分もふんだんにありつつ、でもどのフェチの人でも絶対に抜けないっていう作品。



冨手麻妙の「処女性」を守る園子温監督

み:悶々とした…なんていうか、こじらせ処女の話ですよね。親のセックスとか出すあたり。賛美してるかどうかはわからないけど、「処女性」がテーマなのは確かだと思います。

ロ:男性って処女性への憧れが強いというか、男性にはないものだから聖域だと思ってるんじゃないかな。環境的に子どものころから美術関係の本が家にたくさんあったんやけど、美術でもそれを強く感じてた。

ス:聖マリア像とかね。

み:もはや処女信仰ですね。

ロ:そういうのを見て、逆にエロスを感じるっていうのはあるかもしれない。

み:崇拝の対象になったら、そこはエロスとは切り離されないんでしょうか?マドンナに手を出せないみたいな。

ロ:その、「手を出せない域のエロス」を感じてもらいたいんじゃないかな。そういうポルノ的意識もあるような。わかりやすいんじゃなくてもっと精神的な。

カ:そういうのをイメージしたキャッチコピーっぽいよね。「処女なのに売女 自由なのに奴隷 憂鬱過ぎる日曜日」って。悶々とした処女がパカッと開くぜみたいなことを期待して映画館の扉を開いて、観終わった後はどんな気持ちで観に来たかなんて忘れてしまっていて、このコピーを見て改めてああそうでしたって思い出すっていう。女性ですらエロスを求めて観に来たことを思わず恥じるってくらい芸術性が高い。

み:男性は観たらどうなんでしょうね。これってこじらせ処女の実はけっこう鬱陶しい話だと思うんです。男性ってこういう女性性は理解できないと思うので、観たらポカーンとしちゃうんじゃないのかな。

カ:だいたい、ここに出てくる男性って意味ある?

ス:男性の印象まったくないですよね。ちょこちょこ出てくるんですけど、何も残さずに去っていく感じ。

カ:そして彼女の処女性は守られたまま。冒頭でも、なんでそんな半分パンツずらされた状態でベッドに寝てるのかって、明らかに何かがあったことを匂わせるのに男の人は現れない。

み:男性は彼女の世界には介入できないっていうことなんでしょうか。林のシーンでも素股って言ってましたからね。

ロ:処女やのにすごいこと言うなあって思ってた(笑)。

カ:撮影現場のシーンにしろ、わざと「フリだけでやってます」っていうのを見せてるような意図は感じるよなあ。

み:明らかにパンツ脱いでなかったですもんね。これも全部わざとか…!

カ:彼女の処女性を守ってるんですよ、監督が。体当たりな役をした女優さんって、そのイメージが強くなっちゃうことあるでしょう。門○麦ちゃんとか見るとつい心配になっちゃうっていう(笑)。でもこれは、冨手麻妙さんの裸は見てしまったけど、次の作品も安心して観れるって思う。

み:確かに裸を晒したけど色が付いてない感じですね。

カ:心から悦びを感じて喘いだシーンなんていっこもないもんね。

ス:“快楽”がどこにもない!

み:それも“アンチ”ポルノですね。まさかの処女性。

カ:こんなに見たのに、一体何を見たんだろうっていう。



女性解放宣言

カ:チラシの解説には「小説家兼アーティストとして時代の寵児となった京子が…」って書いてるけど、ほんまにそんな話やったんやろかって思えるほどの煙の巻き方だったよね。

み:確かに、作品紹介とか作品解説とかがここまで用を為さない映画ってないですね。たとえば前情報のない中でこの映画を観て、解説書いてくださいって言われても何も書けない。

ス:何が真実で何が虚構かも観ててわからなくなる。混沌としたまま放り出されるね。

カ:そう!でも、だからといって映画評論家とかにこのシーンの意味はね、とか聞かされても、まあそうなんでしょうけど、それが知りたかったわけでもないし!っていう。ただただ園子温め!って気持ちですよ(笑)。

ス:でもこれはリピートしたくなるかも。こうやって一緒に観た人としゃべって気づくことも多くて、私は観返したくなったな。

カ:いろんな人に感想を聞きたいよね。

み:これまでの3作品は、観た人それぞれが自分の中に評価ができていろいろ話せたけど、今回は自分の中でもこの存在が固まらないままですね。

ロ:カナさんみたいに泣ける人もきっといるんじゃないかな。

み:でも女性解放を真剣に考えている人ほど、これを観ると激怒しそう(笑)。

カ:私にはもはや、平塚らいてう以来の高らかな宣言と思えたけどね。

み:若い人が観ると、プロパガンダになり得る可能性もあるんじゃないかな。そのくらい力強かったですよね。




いかがでしたでしょうか?確かにこれは「問題作」!ポルノ企画に参加しての「“アンチ”ポルノ」を掲げた園監督らしい作品でした。ここには記載しませんでしたが、とにかく筒井真理子さんの存在感と驚きがハンパなく、座談会の途中からは全員が「真理子さま」と呼ぶ事態になっていました(笑)。そのすごさはぜひスクリーンで!

次回はいよいよ最終回、中田秀夫監督の『ホワイトリリー』でお届けします。ご期待ください!

(mirai)

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