上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
冬の光
(C)1963 AB Svensk Filmindustri

ベルイマン『冬の光』


 スウェーデンの冬はさぞかし寒かろう。今回ご紹介するベルイマン『冬の光』は、観ているだけで冷たい空気が身体にまとわりついてくるような厳しい冬の情景を背景に、とある教会で起こる複雑な人間模様を映し出しています。冷え切った身体が堪える寒さの中、思考が鈍ってゆく状況下では、宗教による心の救済も叶わず、むしろその神の不在に対する葛藤が募っていくばかりです。

 この映画の主人公はトーマスという一人の悩める神父であり、心のわだかまりを抱えながらも日々教会を訪れる信者に祈りを捧げています。信者に対して祈るべき存在の神父であるのにもかかわらず、彼は過去の妻の死の悲しみから逃れられず、またその後のあらゆる人間関係に悩まされ、ついには利己的な思考に陥ってしまいます。それは物語が進行するにつれて色濃く描かれていきます。

 神の不在に対する苦悩を描いたこの映画は、プロテスタントの上級階流に生まれながらも、宗教の偽善的な在り方にうまく馴染めず、演劇への道を志すこととなるベルイマン本人の自伝的な映画であると言われています。それゆえにこの映画において宗教というものは、敬虔な信仰によって成り立っているものではなく、むしろ宗教に従事する労働によってかろうじて成立しているようなものとして描かれているようにも見えます。それは宗教の物語を超えた先のリアリズムに希望を見出したベルイマンにとって重要なポイントだったのではないでしょうか。主人公トーマスの精神状態に関しても、利己的といってしまえばそれまでなのですが、この利己的な思考の在り方の先にある精神の自立への渇望と考えることもできるかもしれません。

 またこの映画はごく自然で微細な俳優たちの振る舞いから読み取れるものがきわめて多く、感情的でないシーンほど情報量が多いように感じます。そういった映画全体の質の高さが、静かな映画でありながらも退屈にならない理由なのかなと思いました。

 この映画について多くを語るのは野暮かな、とおもいます。ですので是非とも劇場に観にいらしてみてください。寒い冬にぴったりの映画です。
(舘)
Secret

TrackBackURL
→http://motoei.blog.fc2.com/tb.php/810-59ef83b9
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。