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日本の若手映画監督を応援するJAPAN NEW WAVE 3(以下、JNW)もいよいよ終盤戦。今回のJNWの中で唯一の女性であり、初の長編作品という草野なつか監督の「螺旋銀河」がついに元映で上映される時がやってきた。いよいよ皆様にこの作品をお届けできると思うと嬉しくて仕方がない。このただならぬ傑作を、決して見逃さないでいただきたい。

物語は、同じビルで働いている綾と幸子が偶然トイレで出会う所から始まる。綾はシナリオ学校に通っていて、今度ラジオの深夜枠で流す10分のラジオドラマの作品に綾のシナリオが採用される。しかしシナリオ学校の講師の先生は綾のシナリオをけちょんけちょんに批判する。一番ダメなシナリオだと思ったけど、一度痛い目に会った方がいいんじゃないかということで綾のシナリオを選んだと言うのだ。

「お前のシナリオには他者がいないんだよ。お前、友達いないだろ?友達を必要だと思ったこともない。」

先生の言うとおり、綾は美人だが気が強く自分本位で友達がいない。共同執筆者と組むことを放送の条件に突き付けられたものの、他人にシナリオを変えられるのが嫌な綾はつい最近トイレで出会った幸子を思い出す。幸子を「友達」に仕立て上げ何とかしようとする綾だが・・・。

今作は、私たちが普段生活している日常と何ら変わりのない世界を描いている。なのに、観ていて一体自分がどこにいるのか分からなくなるような、とても不思議な感覚を味わうことになる。パソコンの前で30分ぐらいあの不思議な感覚をどう伝えればいいかと思案してみたがどうにも言葉が浮かばない。言語化できないような、本当にふわふわした感じがあるのだ。「浮遊感」ということに関して言えば、同じくJNW作品の「息を殺して」もそうだが、あれとも少し違う。草野監督という人は一体どんな風にこの世界を見ているんだ?と頭の中を覗いてみたくなってしまう。それを特に感じたのは、幾度となく登場するコインランドリーと、最後のラジオドラマ収録のシーンだ。

コインランドリーに関しては、予告編にも登場するが、綾と幸子にとってとても重要な場所になる。個人的にコインランドリーは全く利用しないのだが、『螺旋銀河』を観れば間違いなくコインランドリーのイメージが180度変わるだろう。そして、何と言ってもラジオドラマ収録のシーンである。ラジオドラマというのは、当たり前だが音声だけで表現されるもので、映像で表現するにはいささか、というかかなり地味な物だと思う。それに草野監督は果敢に挑戦した。その結果、スクリーンで起こっている出来事とそれを観ている私たち観客の間の境界線がいつの間にか消えてしまい、宇宙のかなたにほっぽりだされたような経験をすることになった。これはぜひとも劇場で体験していただきたい。ごくありふれた日常の世界がいつの間にか自分の経験したことのない異世界へと変貌を遂げている。これぞ映画体験の醍醐味であろう。

ああ、長々と文章を連ねてみたが、とても本作の魅力を1割も伝えられていない気がする。草野監督ごめんなさい。これはやはり読んでいる皆様に観ていただく他にない。日本映画界に現れたきらめくような新しい才能に拍手喝采を送りたくなるに違いない。

(肥田)
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