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いったんスクリーンに投影されてしまえば、
どう解釈しようが映画はすでに観客のもの、
作家の意図や説明などどうでもいいのですが、
時として優れたメイキングは
観客に新しい視野や楽しみ方を広げてくれることがあります。

『キメラ的世界』は、
『オテサーネク』『アリス』を中心とする
シュヴァンクマイエルの作品に関する、
そんなメイキング映像。

家具に、樹木に「生命」を感じる
ヨーロッパ古来の世界観や、
子供時代の「地下室」への怖れを
いつまでも大切にする感性の上に、
あの作品世界が成り立っている、
あの「樹木の選び」はまるで
生きた俳優のオーディションを見るかのようです。

新しさを気負うものではなく、
古いもの、変わらないものが、
時として斬新で輝かしいものとなる。

スターリン体制が崩壊し、
抑圧「してくれる」わかりやすい敵対者が存在しなくなることで
消えていった様々な潮流もあったなかで、
かれらのシュールレアリズムは新しさを保ち続ける。

1968年(「プラハの春」とその挫折の年)の『庭園』『部屋』での、
沈黙を強いられ、自らの方向を見出せず、行き止まりに絶望する怖れは、
1989年、新しい社会システムの『闇・光・闇』に代わっても生き続ける。
ドアには「かぎまわる鼻」に代わって「大量の“物”」が押し寄せ、
それを自らに取り込むことを強要されて狭い部屋に逼塞させられる、
新しい恐怖が迫ってくる(これらの短編のメッセージは明快で、
長編を観るためのウォーミングアップに、なるのかなあ)。

『キメラ的世界』はまた、
ひとつの夫婦のありかたの理想を描いた物語のようにも見えます。

生き方も、感性も一致した幸福な信頼感のうえに、
その表現の方法をめぐる絶えざる争いが繰り返され、
それがお互いを豊かにしていく。

シュヴァンクマイエルの世界は、
ヤンの表現する世界であると同時に、
このメイキングのもう一人の主人公、
エヴァの世界でもあるのかもしれません。

(堀)

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