
ゲイの漫画家、ドラァグ・クイーン、
昼は男性として働き、それ以外を女性として過ごすトランスジェンダー、
『眼球譚』をモチーフに作品を撮る写真家、刺青師、SM愛好家など。
同性愛などの「性的指向」の話というよりは、
いわゆる「変態」(この言葉は作中何度も出てきます)といわれる
「性的嗜好」をもつ人たちを紹介していくドキュメンタリーです。
性的マイノリティを扱ったドキュメンタリーは
「差別はイカン」「同じ人間」みたいな啓蒙的意図が見えるものが多いですが、
本作は監督の思いや思想を入れずに本当に“図鑑”のように並べるという手法で
逆に自分と彼らの“差”を感じさせません。
彼らにとって生きにくい世の中であるならば
それはそのまま私にとっても生きにくい世の中なんだと自然に思えます。
出てくる人たちは冷静で、他者に寛容。
そして自分に正直に向き合い、生きています。
中でも、夥しい数の仏像に囲まれた中で、
「人間じゃないものへの憧れ」を語るドラァグクィーンのインタビューが面白かった。
彼(彼女?)は性的指向がなく、自分が男か女かわからない、というのですが、
これこそ性別を超えた〈人間本来の姿〉を見た気がしました。
この映画を見ると、
「性別」がいかにも「生物の根本的な違い」であるかのように見せかけ、
実際は人が言葉で作り出したものであるか、というのを感じさせられます。
ピアスによって吊り下げられる女性を見て、
性差や、「普通のセックス」という常識は社会が与えるもので、
人間本来の姿に立ち返れば無限の可能性が秘められている!
という気になりました。
(S/N)
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