上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
taiwanidentity_talk_1.jpg

台湾の“日本語世代”へのインタビューを通して
民族の、個人の〈アイデンティティー〉の在り処を問うドキュメンタリー
『台湾アイデンティティー』の上映が始まりました。
2日目の10/6(日)上映後、神戸大准教授の濱田麻矢さんにお越しいただき、
「映画・小説から見る中国語圏アイデンティティ」と題してトークを行いました。

この日の上映は満席立ち見となり、トーク参加の方も50名近くいらっしゃったため
当初予定していた小さな部屋から、急遽大きめの部屋に場所を移しての開催となりました。
会場変更に際しましては椅子の移動など、たくさんのお客さまにお手伝いいただきました。
みなさま本当にありがとうございます。

まずは位置関係や歴史など、台湾についての基本事項をざっと説明していただきました。
日本でいうと九州くらいの大きさである台湾の歴史は、
オランダ統治時代〜鄭氏政権時代〜清朝統治時代〜日本統治時代と
外来政権に支配され続けた歴史でもあります。
時代によって話す言葉が変わる—。
それは、民族としてのアイデンティティを築きにくいということでもありました。
ツールとして何の言語を扱うか、という簡単な問題ではなく、
「日本語で話す人は日本的思想になる」と濱田さんは言います。
言語を奪われるということは思想を奪われるということと同義で、
厳しい弾圧もあって日本語を使い表現していた作家たちは沈黙を強いられ、
白色テロの時代には台湾の文壇は外省人作家(日本統治以後に台湾に入った中国人)
の独壇場になったそうです。

taiwanidentity_talk_2.jpg

そして濱田さんは女性文学が専門ということで、
日本統治時代に活躍した女性作家、楊千鶴の作品を例に挙げ
彼女の著作から伺えるアイデンティティを探る話へと続きます。

楊千鶴は1920年台北に生まれ、静修女子高等学校〜台北女子校等学院を卒業後
「台灣日日新報」で台湾初の女性記者となった才女。
日本語を完璧に自在に操り、垢抜けたファッションに身を包んでいたと言う。

1942年刊の小説「花咲く季節」では自身の出身校をモデルにしたと思われる
ミッション系お嬢さん学校が舞台になっていて、
主人公が友人の結婚を知って感じたことをこのように著している。

〜一抹のさびしさ、露骨にいえば取り残されるといふやうな淋しさだらうか、
そんなものを感じなくてはならない、目標のない生活を送るむすめである
自分たちが悲しかったのであった。〜


せっかく学んでもそれを活かせる場所があるわけでもなく、
学校を出た後はただ結婚するだけの“無責任な娘”であることを悲観している
この文章は楊自身の思いと重なるところが大きいのでしょう。
だからこそ彼女は日本語を完璧に身につけ、日本の最新ファッションに身を包み、
従来の“無責任な娘”ではない“新女性”としての自分を求めたのだと濱田さん。
1993年に刊行された自伝「人生のプリズム」では、
台湾の友人と話すときより日本人の友人と話すときの方が
文学や哲学などにまで話が及び、自分のステージが上がる気がする、
と明らかに読み取れる文章を残してもいると紹介されます。

完璧な日本語&最新ファッションで言ってみれば〈武装〉した楊ですが、
1942年刊のエッセイ「嫁ぐ心」「長衫」ではそれでも捨てきれずに
自身の核を為していた“伝統的な台湾の娘”という部分にも触れています。
慶応大学仏文科でモダンの塊のようでもあった裕福な男性と激しい恋愛に落ちるも、
彼は彼女の〈武装〉を台湾人ということへの劣等感だと非難する。
そして楊も彼と結婚して畳に正座してご飯とみそ汁を食べる生活はしたくないと考える。
また、日本軍によるシンガポール陥落に涌く台湾で、
「何を着てお祝いしよう?」と考えたときに長衫(チャイナドレス)を着たいと思う楊。
完璧な日本人に〈武装〉したいのに、和服への抵抗感はぬぐい去れない。
でも長衫を着るときには日本人の友人と一緒にいたいと考えている。
なぜなら彼女と話している自分を見てもらえば、自分が完璧な日本語を操れる
“新女性”だということが周囲にもわかってもらえるからだと言う。

この彼女のアイデンティティの揺らぎには
お話を聞いていて私も非常に心を揺さぶられた気がしました。
新しいものを求めるも、古いものを捨てることはできない。
これは家事労働を主に担い、文化=生活という生き方をすることが多い
女性ならではの揺らぎではないかと思えたからです。
もっと彼女の著作を読んでみたくなりました。

そして濱田さんは「台湾のアイデンティティを知るためのブックガイド」として
さらに4冊の書籍を紹介した資料もご用意くださいました。
以下にご紹介しますので、ぜひみなさんも機会があれば手に取ってみてください。

「台湾文学と文学キャンプ」(赤松美和子/東方書店/2012)
「台湾海峡一九四九」(龍應台/天野健太郎訳/白水社/2012)
「台北人」(白先勇/山口守訳/国書刊行会/2008)
「古都」(朱天心/清水賢一郎訳/国書刊行会/2000)

最後に紹介した「古都」の著者、朱天心の姉である朱天文は
ホウ・シャオシェン監督の脚本家としても知られる女性。
先日当館で上映した『悲情城市』の脚本ももちろん手がけています。

以前『セデック・バレ』上映時に行ったトークでも同様に満員となったことを思い、
改めて台湾への関心の高さを実感すると同時に、
映画に登場する日本語世代の方々と同世代と思われる方から、
学生だという若い方まで幅広くトークにご参加いただいたのも嬉しいことでした。
“女性文学”という切り口で台湾のアイデンティティを考えるという、
個人的にも非常に興味深く面白いテーマのトークでした。
また機会があればぜひお話を伺いたいです。

濱田さん、みなさま、本当にありがとうございました。

(mirai)

Secret

TrackBackURL
→http://motoei.blog.fc2.com/tb.php/409-7c1b9149
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。