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8/24『戦争と一人の女』上映後、同映画のプロデューサー寺脇研さんのトークが開催され、
会場いっぱい20人が参加しました。
ご参加いただいた正木俊行さまより感想が寄せられましたのでご紹介いたします。



Twitterで話題になっていたので、一度見てみたいと思っていた映画。

神戸の元町映画館で上映があるとの情報を得て、
プロデューサーの寺脇研氏のトークもあるというので行ってみた。

どこで見たか忘れたが、若松孝二の作品『キャタピラー』への
アンチテーゼというコメントもあり、ぜひ見なければと思っていた。
というのは『キャタピラー』は無残な失敗作(ただひどいというのではなく、せっかくの
素晴らしい素材をめちゃめちゃにしてしまったという意味で)だと私は考えているので、
そのアンチテーゼたるこの作品を確認したかったわけだ。

『キャタピラー』同様、『戦争と一人の女』も戦争で負傷した帰還兵を中心に据えた作品。

物語の流れのひとつは、題名にもなっている坂口安吾の小説で、
作家自身であるらしい小説家と娼婦の話。

そしてもうひとつが、恐らく小平事件を下敷きにしているのだろう、連続強姦魔の話で、
この作品の当初の計画ではこのストーリーだけだったと、
上映後の寺脇研氏のトークで知った。

R-18指定の映画で、全編セックスシーンだらけという作品だが、
後者の小説家との絡みにおいてはエロスが感じられるものの、前者の帰還兵の流れに関しては、
やけにリアルでひたすら暴力的な強姦シーンが何度となく繰り返され、
これにはどうも、エロスとは言いがたいものを感じた。

私の後ろに私語もしながら座っていた夫婦がいて、女性のほうが、強姦シーンのたびごとに
不快そうな声を発していたのが気になり、またその気持もよくわかった。
私自身、いささか食傷気味になり後味の悪さを感じたのだが、作品の主張するところは、
単なる一人の変質者を描くというより、ベトナム帰還兵にPTSDが多数発生したのと同様、
この犯罪は戦争が生み出した精神疾患によるものと言いたいのだろうと、それは予想がついた。

ただ、ある種の不快表現には、映画的な文法としては
そのあと何らかのカタルシスを観客に与える仕掛けを用意しなければならない。
つまりはバランスを取るわけだ。

私がこの映画でいちばん問題と感じるのはそのバランスの取り方の悪さだ。
多数の強姦致死という犯罪のあと、この帰還兵は警察に捕まる。
普通なら悪事→処罰ということでバランスは取れる。
ただこの作品の場合、あまりにも悪事の部分での時間配分と
そのリアリティが半端ではないものだから、
観客心理としては単に逮捕だけではとてもカタルシスを感じられない。
しかも最後の方では強姦された女性に「初めて感じた」と言わせていて、
フェミニストならずとも強姦肯定の映画なのかと疑問に思わざるをえない部分がある。

強姦犯である帰還兵は、逮捕されたあと、警察の取り調べで堂々と天皇批判をやる。
中国で、三光作戦をやった。上官の指示であり、すなわち天皇の命令だった、と。
つまりこのシーンでは、帰還兵の強姦の弁明自体が天皇制批判であり、
そのままこの作品の主張になっているわけだ。

しかし映像による詳細でリアルな犯罪の描写に対して
こちらは単に言葉によるいわば「理屈」であり、
残念ながら強姦場面の不快感を解消できるほどにはバランスはとれていないのである。

上映後のトークで、寺脇氏は「この映画の評価は賛否両論で、中間がない」と言っていたが、
恐らく「否」の感想の多くはこのような理由によるのではないかと思う。

さて、私が気になった部分はそういったことなのだが、
たとえば若松孝二の『キャタピラー』と比較すると、戦争の捉え方は
この『戦争と一人の女』の方がまっとうだと言える。
寺脇氏はこの若松作品について、「いちばんいけないのは最後に原爆の映像を出したこと。
全体としてどうしても被害のみを強調する作りになっている」と評した。

私はそれに加えて、主張の正当性を表現しようとするあまり、安易に実写映像を使い、
客観化を焦ったところに『キャタピラー』の最大の弱点があると考えている。
死者に鞭打つつもりはないが、これはほとんどシロウト映画の発想ではないかとすら思うのだ。

寺脇氏のトークで、その若松監督が『戦争と〜』の試写を見に来て、
「お前ら、まだまだだなぁ」などと言ったとか、非常に面白い裏話も聞けた。

賛否両論のこの映画、一見の価値はあると思う。



(okaby)

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