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ブルガリアといえばヨーグルト。
ヨーグルトといえばブルガリア。
ブルガリア ニアリーイコール ヨーグルト。

ってくらい歴史的・地理的知識
ニアリーゼロで映画を見たあとで、
あわてて調べたところ
ドイツからブルガリアまでは
間に4つ、5つ国がある。

バイ・ダンと孫のアレックスは
この距離をタンデム自転車で帰郷する。
ざっくり言うとヨーロッパ大陸南北横断の旅。

両親とともにドイツで自動車事故に遭い、
ただ一人命拾いしたものの
記憶を失くしたアレックスは
両親が死んだことさえ知らされていない。
自分が何ものかもわからない戸惑いと
未来を見ようとしない虚ろな瞳。

はるばるブルガリアからやってきたバイ・ダンは
そんな彼を薬を与えるだけの病院に置いておくより
いっしょに汗をかく旅をしながら
生きる気力と記憶を蘇らせようと考える。
物語全体の牽引役となる
バックギャモンと自転車を通じて
自らの意志でサイコロを振らなければ
自らの足でペダルを踏まなければ
人生は前に進まないことを伝える旅だ。

そんなロードムービーに挿入されるのが
80年代、独裁政権下にある
ブルガリアでの家族の物語。

アレックスの両親が亡命を決意する経緯や
イタリアの難民収容所での失意の日々。
現在の旅でふたりが目にする景色の解放感と
当時の社会の閉塞感が対照的で
そこに漂う空気の重ささえ
違っているように見える。

現在と過去の交錯する構成は珍しくはないけれど
この映画では観ている側の感情変化と
アレックスの記憶の再生をシンクロさせて効果的。
たとえば冒頭で
事故死するアレックスの両親について
その時点では感情移入のしようがないけれど、
回想シーンが進むにつれて彼らの人となりや
歩んできた人生の厳しさがわかり、
アレックスが記憶を取り戻したときには
彼らがこの世にいない悲しみを共有せずにいられない。

アレックスの父親(バイ・ダンにとっては娘婿)にも
絶対の信頼をおかれていたバイ・ダンは
バックギャモンの名手であるだけでなく、
圧政の時代を民主主義活動家として生き
政治犯として服役したこともあるだけに
ただの好々爺ではない。
どんな弾圧にも屈しない逞しさと
したたかな楽観主義、
時代に翻弄された哀愁も漂わせながら
常に大らかで大地に根を張り、
しなやかで、決して折れない大木のよう。
この人がいてくれるだけで安心できる、
そんな人物像をミキ・マノイロヴィッチが体現している。

かつての無邪気さや陽気さを取り戻したアレックスと
バイ・ダンがバックギャモンの勝負をつけるラストの
「そんなんあり!?」なオチもしゃれていて
重いテーマを含んでいるにもかかわらず爽快な観賞感。

生きていれば時にはひどい目にもあうし
悲しい別れもあるけれど
人はそれに向き合えないほど弱くはない。
大きな温かい手にぽんと背中を押されたような、
そんな気分になった。

(ゴマ)

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